深呼吸する言葉

言葉の力

白日日記

metakit2004-09-26

雑誌「薔薇族」が休刊した。ホモ人口が減っているとは思えないので、これは、別の要素があるのだと思う。かつて、駅前には小さな書店があって、やけに明るい電球と、レジに座っている機嫌の悪そうな老人が印象的であった。通路は狭くて、人が立ち読みをしている背後を、横向きになって通り抜けるしかない。そういう書店の一角に、必ず怪しげなコーナーがあり、昭和初期の匂いのするエロ雑誌やSM雑誌が並んでいて、きっちりとした背広姿の中年が立ち読みしていた。薔薇族はそういうところで、ひそかに売られていた。そういう書店が、21世紀になって急速に滅亡している。昨年は、年間1000店規模の書店が閉店になっている。もうすぐ完全に滅亡するだろう。

代わりに出来たのが郊外型のロードサイド店や、都心の大型店舗だ。東京駅に出来た丸善の大型店を見てきたが、明るく広々として、かつての町の書店にあった、猥雑な気配はまるでなかった。ああいう店で、大勢の一般客とともにレジ前に行列して薔薇族を買うのは、よほど勇気がいるだろう。

書店構造の変化は、コンテンツそのものを変化させる。ああ、からっと明るく薄っぺらい日本に、なんのオリジナルがあろう。