深呼吸する言葉

言葉の力

白日日記

metakit2005-05-29

新宿ステーションビル(マイシティ)の改築は、日本という社会がどんどん嫌な国になっていくという象徴のような出来事である。マイシティの地下は、古い市場のように安売りの肉や魚や弁当などが販売されていて、僕は新宿で飲んだ帰りや、わざわざ途中下車して買い物していくような場所であった。ゴールデン街のママも、お通しの材料を買うために来ていた。地域生活者にとって生活に密着した店舗だったのである。戦後初期、新宿の駅前は巨大な闇市のマーケットで近郊の人たちが集まり、戦後第一の都市として栄えた。そのスペースが、ある日、あっという間に、おしゃれなファッションスペースに転換した。なりゆきを見たわけではないが、充分に想像できる。JR東日本の経営陣が、企業業績を向上させるために、坪あたり収益性を計算して、安売りの食料品より、ぶったくりのアパレルの方がよいと判断したのだろう。アメリカの大原簿記にしか過ぎないMBA資格をステータスにしたコンサルティング会社の馬鹿者どもがくだらないアドバイスをしたのかも知れない。この転換によって、一企業の収益性は瞬間的に向上するかも知れないが、エリアとして集客力は一気に減少するはずである。自分の会社の発展しか考えられない業績馬鹿に経営という社会政治を任せてはならないと思う。「最大価値の追求」などという奴に限って、「価値」というものが、どれほど多様性と重層性があるかを想像する力がなくて、株式配当に必要な今年限りの収益性しか分からない奴である。かくして、新宿は没落し、仕方がないので、渋谷の東急グループに期待しながら、渋谷市場で買い物をするしかないのか。ああ、久しぶりに腹がたったすよ。