深呼吸する言葉

言葉の力

白日日記

metakit2005-11-26

 50歳になった時「大きくなったら何になろうか」と思った。
 なぜか、そう思ったのだから仕方ない。
 ただ、子どもの時とは違い、その思いを実現するためには戦術が必要だった。
 僕はまず、若い仲間を集めて生前葬をやった。今までの自分のやり方を捨てないと「大きくなったら」などとは思えない。半年かけて集まった若い連中に、これまで自分が考えてきたこと、思ってきたことを全て語った。そして「遺書」としてまとめたのが「21世紀企画書」である。生前葬に参加した久米信行くんは「橘川さんは、これで最後の本だと言いながら、その後、爆発的に本を出してる」と言うけど(笑)「21世紀企画書」の前と後では、僕にとって本の意味が違う。それまでは、自分が「発見する」ために本を書いてきたのだが、もう僕は何一つ新しいことなど発見出来ない。それまで自分が発見したことを、ありとあらゆる手段で繰り返し伝えていくだけだ。老人の繰り言メディアである。(笑)もう僕は終わっているのであり、僕に新しい発見を期待しないで欲しい。僕は「大きくなったら何になろうか」と考えているだけなのだから。

 1980年(30才)に「企画書」(JICC出版局)を書き2000年(50才)に「21世紀企画書」(晶文社)を書くまでの間、僕は4年に1冊のペースで本を出すことにしていた。ほぼ予定通りになっている。そして「21世紀企画書」以後は毎年のように新刊を出した。2004年は「小説」を3冊出した。もちろんこの「小説」は、これまで僕が発見したことを、別の手法で伝えるための手段の一つだったのだが。2004年、僕は「小説家」だった。大きくなったら何になろう。今年は実は「カメラマン」だった。とにかくたくさんの写真を撮り続けていた。この写真をどういうカタチで社会的なものにするか分からなかったのだが、夏に渡辺順太郎がたくさんの言葉を送ってきたので、「これか!」とひらめき、1日で「写真と言葉」の本をデザインしてしまった。その後、つめなおして、年内ギリギリに発行されることになった。

▼都市野営読本のご案内
オンブック:『都市野営読本』渡辺順太郎、橘川幸夫(写真)

 さて、来年は何になろうかなっと。