深呼吸する言葉

言葉の力

戦後的自我論(新刊をまとめているので、今日からは、そのノートを書いていくことにします)

metakit2005-04-21


 小泉純一郎という人の行動原理は単純明快である。それは「自分を裏切らない」ということにつきる。自分が首相になったら郵政民営化をやる、と「自分が自分に」約束して、それを決して裏切ろうとしない。靖国参拝も、おそらく誰かと約束したのだろうが、行動原理は「自分が自分に約束したことだから、必ず守る」ということで突っ走る。彼が首相になってやった事は、「自分に約束したことだけ」である。
 だからライブな突発事故には、タテマエの対応しか出来ないし、自分が約束した事以外には、まるで無関心で、まわりの官僚の指示に従順である。外交は外務省に、経済は財務省に、まかせっきりである。その結果、「アメリカの言うことを聞いてれば間違いない」という、とんでもない外交戦略しか持たない外務省の言いなりになって、海外派兵を推進し、日本の有力企業の大半はアメリカに支配されるという結果になった。会社が株主のものであるというアメリカ型の資本主義で言えば、外資ファンドが50%に近い大企業を支配しているのは外国である、ということになる。小泉は、その動きを加速させようとする経済政策しかしていない。
 要するに、小泉にとって大事なことは「自分を裏切らない」ということだけであり、その価値は国家の運営よりも上位にあるのだろう。「自分を裏切らない」という行動原理だけで、国家運営を押し通す首相というのは、歴史上でも聞いたことがない。小泉の自我が、西洋的な近代的自我でもなく、独裁者のそれでもない。あまりに小さいがあまりに強固な、日本の戦後社会が作った、おたく的な超自我である。コミュニティから切り離された自我というものの行く末を、僕らはこれから目撃しなければならないだろう。